眞邊明人著『もしも徳川家康が総理大臣になったら』
あらすじ
新型コロナウイルスの蔓延により、混乱に陥る日本。先の総理大臣はこの事態を収拾するため、持てるテクノロジーの全てを終結させ、現代に〝過去の英雄、英傑たち〟を復活させた。徳川家康、豊臣秀吉、そして織田信長の三英傑を始めとして、大久保利通や菅原頼長、足利義満など、生きた時代も違えば志も違う偉人たちで内閣を組閣し、日本を託していく。
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まずもって、本書『もしも徳川家康が総理大臣になったら』はフィクションであり、実在していた過去の偉人や英雄、英傑とはあまり関係がないという事を念頭において、読み進めましょう。実際には、仮に徳川家康が現代に蘇ったとしても、昔日のようなリーダーシップを発揮する事はできないだろうと思いますので。
さて、本書はそのタイトルが示す通りいわゆる〝とんでも小説〟の部類に入るものだと思います。というのも、過去の英傑たちは現在日本が誇るテクノロジーの結集によって、高度なAIと過日のような思考パターンと決断力を有しながら、現代の暮らし、ルールなどを熟知しています。それになんとホログラム技術により、リアルな人の姿形をとっているというのですから驚きです。どこにそんな技術を隠し持っていたんだ日本!
もしこの技術があれば、おそらく現実の日本はIT大国として、GDPは高く、長者番付に名を連ねるようなリッチが続々と生まれていたでしょう。
けれど、現実ではそうではありません。そういうところも、おそらく皮肉が込められているのではないのかと僕は思いました。
本書には歴史の教科書に名を連ねるような偉人が多数登場します。とはいえ、この本は昔を懐かしむような類いの本ではないというのは何となく察していただけるのではないでしょうか。
家康を始めとした英雄たちが蘇ったのは、何も時計の針を戻そう、歴史を再び封健時代に戻そうというのではありません。命をかけて散っていった彼らの行動力、判断力、決断力でもって、コロナウイルスに打ち勝とうとしているのです。
そう、本書はまさに、僕たちが現在もなお苦戦を強いられている新型コロナ渦の日本を描いています。
コロナ渦で様々な事が変わり、たくさんの問題が浮き彫りになりました。そして、そんな最中にあって、政治に対する不信感を抱いた人も大勢いるかと思います。
もし、二年前の日本に徳川内閣のような内閣があったとしたら、家康や秀吉、信長たちのようなリーダーと閣僚、官僚がいたとしたら、きっともっと違った結果になっていたと思います。
この本は、読んでいてスカッとします。エンタメの要素が強いかと思いますが、同時に現代の僕たちに対する問い掛けも含まれているのではないでしょうか?未来を作るのは過去の偉い人ではなく、現代を生きる僕たちではないのか?と。
戦国時代、江戸時代、幕末時代、明治時代にそれぞれの目的、野心、夢のために剣や弁で戦った英雄英傑たち。彼らのような決断力や行動力は一朝一夕に身に付くものではありません。また、僕もそうですが、誰しもがリーダーシップを発揮できるというものでもありません。
しかし、僕たちもこの国の一員であり、日本は国民主権を謳っている国です。僕たち一般人にも、日本の未来を作るために出来る事があるのではと思いました。
なお、後半はやや雲行きが怪しくなりますが、それも一つの醍醐味というものではないでしょうか。
それでは、今回はここまでにしたいと思います。もし、興味を持っていただけたという方がいましたら、ぜひ下のAmazonから購入してみてください。