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【闇の脳科学】人は人の手によって作り変えられる。時代に葬り去られた医師の記録!

ローン・フランク著『闇の脳科学』

 

 

概要

精神科医、ロバート・ヒースは、それまでの常識を覆す革新的治療法を開発する。今日ではほとんどあたり前となりつつある精神病の脳へのアプローチ。その先駆けとなった脳深部刺激療法。時代を先行するその治療法は、自らの心の病に悩む患者たちを救うことに成功する。けれど、時代は彼のそうした新しい治療法を受け入れることなく、ロバート・ヒースの名は歴史の闇の中に葬り去られていくのだった。

 

 

ロバート・ヒースという男の名前を聞いた事がありますか?専門家の間でも、彼の存在を知る者は少ないと言います。

 

本書『闇の脳科学』は脳深部刺激療法を開発したそんなヒース博士に付いて書かれた本です。

 

脳深部刺激療法とは、間者の頭の中に複数の電極を差し込んで、適度な電流を流す事で躁鬱を始めとした様々な精神的な病を治療しようという試みです。

 

この試みの根幹にあるのは、今日ではあたり前と思われている「脳は体の一機関である」という考え方です。

 

この治療法が登場する以前は脳の前頭葉を破壊するいわゆる「ロボトミー手術」が盛んに行われていました。しかしこの手術は、確かに統合失調症による幻覚や幻聴を消し去ってくれますが、その代償として一生無気力な状態を送らなければならなくなります。

 

精神の病の治療の代償が一生を台なしにする事なんて、誰だって嫌です。けれど、ヒース博士が脳深部刺激療法を編み出すまで、ロボトミーは行われてきました。

 

僕は本書を読んで、ロバート・ヒースという男のあくなき探究心に感嘆してしまいました。彼はあくまでも医師ではなく研究者でした。その根底にあったのは、人の脳と精神はどうなっているのかを解明する、という彼の使命でした。

 

そして辿り着いたのが脳深部刺激療法だったのです。

 

冒頭に、ゲイの男性を異性愛者にする、という実験が紹介されています。

 

現代の僕たちの感覚からすると、脳に電極を埋め込んで同性愛者を無理矢理異性愛者にしてしまおうとするこの実験はおぞましいものとして映るでしょう。

 

けれど、この実験を受けたゲイの男性は当時の時代性もあり、自分が同性愛者であるという事に悩んでいたのです。

 

ヒース博士はある側面では、彼を救ったのだという事です。

 

このように、ヒース博士はその後も多くの人々を救っていきます。

 

しかし、時代性という怪物の前に、ヒース博士は糾弾に晒されてしまします。そして今や、彼を知る者はごくわずかとなってしまいました。

 

彼の熱意と功績を、僕たちは知りませんでした。今日の脳の治療。その前身を作ったのはロバート・ヒースという野心と向上心に溢れた男だという事を、です。

 

本書の中には、彼のそうした魂の一端が垣間見えるのではないでしょうか。そして、この本を読んだ後、きっと何事かを成し遂げないという野心に目覚めるはずです。

 

それでは、今回はここまでにしたいと思います。それではまた、次回お会いしましょう。

 

さよなら。

 

 


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