10年後、僕たちの未来に訪れる世界を、あなたは予測できますか?それはテクノロジーが僕たちの生活を豊かにしてくれるユートピア的な未来?それとも機械が人間を支配しているディストピア的な未来?
さて、今回はそんな10年後を占う本をご紹介したいと思います。
それがこちら。
ピーター・ディアマンス&スティーブン・コトラーの共著『2030年 すべてが「加速」する世界に備えよ』です。
本書はあのアメリカの電気自動車会社のCEOイーロン・マスクの盟友が現在、本当に存在するテクノロジーとこれから生まれるであろうテクノロジーを交えつつ、2030年以降の未来を予測するという内容になっています。
概要
エクスポネンシャル・テクノロジーがコンバージェンスを繰り返し、新しい科学技術があたり前になり、そして過去の物となる現代。それは日を追う事に加速度を増していく。テレビ、自動車、冷蔵庫、携帯電話。数十年前までは一部の富豪しか手にする事ができなかったそれらの高級品は、今や僕たち庶民の生活にはなくてはならないあたり前の物になっていった。これから先の未来にも、同じような事が言える。自動運転車、VRとAR、宇宙旅行。現在は国家規模の研究機関か金持ちの娯楽程度に思われているであろうそれらの新技術も、近い未来には誰もが教授できるあってあたり前のインフラになっているかもしれない。
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本書はAI、ロボティクス、電脳空間、宇宙開発など、様々な分野を網羅的に扱った本になります。それらは一つ一つの独立した発展を遂げているわけではなく、それぞれが他の分野に多大な影響を及ぼし合って、指数関数的にその威力を増大させていっています。
エクスポネンシャル・テクノロジー(加速度的技術)がコンバージェンス(融合)するとはそういう事なのです。
本書の冒頭部分で、著者はこのテクノロジーの発展の仮定を六つの段階に分けています。
それが、
デジタル化
潜行
破壊
非収益化
非物質化
大衆化
です。
どういう事かと言うと、登場したばかりの画期的な新技術がデジタル空間に変換されると、最初は知っている人は知っているという状態になります。やがてその画期的なテクノロジーにかかるコストが限りなく少なくなり、別の技術と統合され、更にその先にはその分野の専門家や富裕層のオタクのみならず、僕たち一般の人々にも知れ渡り、手に入るようになるという事です。
スマートフォンを例に挙げるとわかり易いでしょう。スマホにはカメラ、電話、メール、メディアプレイヤー、財布などなど、様々な機能が搭載されていますが、元々それらは独立した個々の物でした。それは過去には一部の富裕層が所有していただけでしたが、それらの機能を全て備えた高性能スマホは今や僕たちの手にあるだけではなく、なくてはならない物に変貌しました。
これが、デジタル化から大衆化までの一連の流れです。同じような現象がこれから先も続いていき、新しい物はあたり前の物になり、そしてまた新たなテクノロジーが生まれていくのです。
本書では、機械工学からゲノム治療や宇宙開発まで、様々な分野を広く浅く扱っていきますが、その中でも僕が注目したい分野を三つ、ご紹介します。
一つは移動手段です。テスラやグーグルなどを始めとして、世界的に完全自動運転車の開発に力を注いでいます。日本でも、自動運転支援システムはありますし、また無人バスのテスト運航を開始したと県も出てきています。
また、自動運転だけではなく、空飛ぶ車といういかにも近未来的な乗り物や、宇宙船に使われる技術を応用したハイパーループと呼ばれるリニアモーターカーの究極版のような乗り物も登場しつつあります。
しかし、最も注目すべきなのは、そもそも〝移動する必要がなくなりつつある〟という部分です。
近年、コロナウイルスの蔓延により日本でもテレワークが広まりつつありました。自宅にいながら仕事をしている人を僕は羨ましく思います。
なぜならそこには、自宅から会社に通勤する、という事がないからです。この一事だけを見ても、移動するという行動は見直す事ができるでしょう。
4Gから5Gへの移行が進めば、この流れはますます顕著になると予想されます。理由としては、VR技術の進化が挙げられます。
VRがあれば、バーチャル空間を使ってのビジネスが加速され、また新たなビジネスも生まれるだろうと予想されるからです。もちろん、職種による制限はありますし、テレワーク自体がいいものかはわかりません。あくまで通勤という部分だけの話です。
自動運転やVR・AR以外にも、ロボティクスの分野でも移動手段に画期的な進化がもたらされています。それがロボットウエイトレスです。
自動で配膳をしてくれるロボットもいますし、人間の脳波を読み取り、遠隔で捜査可能なロボットもいます。現在、それらのロボットは人手不足の緩和や様々な事情で寝たきりで移動が困難な人々の仮の肉体として労働などを行っています。
話が逸れてしまいました。こうした技術の登場により、移動手段はほぼゼロの状態になる事が予想されます。非常に楽しみです。
二つ目は寿命の延長と死の克服です。
これは先日の『LIFESPAN 老いなき世界』でも似たような事を言っていたと思いますが、結論としては人間は老化からくる体の不調やその果てに待ち受ける死という運命を覆す事ができるようになるというものです。
僕の周囲の知り合いに長生きをしたいか、と聞くと、大抵は100歳まで生きるなんて嫌だと言います。数年前までの僕も、そちら側の人間でした。
けれど、本書を始め、様々なテクノロジーの進歩を知るにつれ、長生きしたい、一日でも長く生きて、僕を待つそうした新技術を体験したいと思うようになりました。
そのためには、健康に気を使った生活をする必要があります。食事、睡眠、運動等々。
しかし、それらを正確にきちんと毎日行うのは難しい。けれど、その悩みをまさにテクノロジーが解決してくれるとしたらどうでしょう?
スマートウォッチなどに内蔵されている心拍計や歩数計などは御存じかと思います。しかし、今後はそうした時計式ではなく、もっとパーソナライズ(個人)化された機器をインプラントする形になるだろうと予測されています。そうすれば、今よりも性格に心拍数や体温などを計測可能になり、それが僕たちの健康増進に役立てられるというわけです。
そして三つ目は移動です。これは一つ目の移動手段とは異なり、人類の生活基盤の移動という意味です。
より正確に言い表すと、難民になる、という事だととらえてもらえるといいかと重います。
現在でも、難民は非常に厄介な問題です。人命、人権、自国の国民や利益を守る事。ありとあらゆる事を考え、政治家の方々は難民を受け入れる、受け入れないという判断をされているのだと思います。
そして地球規模で、難民が発生する可能性が示唆されているのです。その原因は我々人類の経済活動により生じたCo2などの化学物質です。現在、各国はCo2の削減やクリーンエネルギーの開発などに力を入れていますが、現状でも砂漠化や南極の氷、希少生物の絶滅など様々な問題が進行しています。
そこで、人々は自国住めなくなり、難民になってしまうのです。更には、いずれは地球にもいられなくなる時がやって来るのでは?と言われています。
そこで、新たなる居住地として、宇宙を漂う惑星に大移動する、というシナリオが考えられています。もはやスケールが桁違いですね。
さて、いかがでしたでしょうか?多くのエクスポネンシャル・テクノロジーによって、多くの問題を解決する事ができるようになると予想されています。今後も、こうした技術の発展は楽しみですね。
それではまた、次回お会いしましょう。さようなら。
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