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【心淋し川】寂れた片隅の町。傷を抱えた人々が、今日もちゃんと生きている。

西條奈加著『心淋し川』

 

あらすじ

江戸の片隅に存在する心川。その川の名を冠した心町に暮らす人々の姿を描く短編集。貧乏暮らしから脱出したいと願うおちほの心の機微を描いた『心淋し川』。三人の妾とともに暮らすおりきが、それまで考えてもみなかったあたらしい自分と出会う『閨仏』。過去にこっぴどく別れて、再会した想い人とその子供との間で揺れる思いを描く『はじめましょ』。他三篇を収録。第164回直木賞受賞作。

 

 

人類がお金というものを発明して以来、お金と人間性や人生というものは切っても切り離せない存在となっていきました。

 

本書『心淋し川』の主な舞台は『心町』と呼ばれる町です。心川の側に作られた、訳ありな人々が集う少し淀んだ空気をまとった町。

 

心町に住む人々は決して裕福とは言えませんが、それでも日々を懸命に生きている人間ばかりです。

 

江戸時代は貨幣経済が成り立ちつつある時代でもあります。つまり、お金を稼げればそれなりにいい暮らしができ、そうでなければ地を這いつくばるような暮らししかできません。

 

心町とはそういう場所です。

 

しかし、そんな心町であったとしても、ほそぼそとではありますが暮らしを営んでいる人々がいて、彼らはみな懸命に生きていました。

 

僕は個人的に『閨仏』と『はじめましょ』の二編が好きでした。この二編は合わせて一篇と考えることもできるなあなんて勝手に思ってもいました。

 

なぜなら、『閨仏』は妾宅に住むおりきが女性用の性玩具に仏様を彫るところから始まります。そこで、自分でも気が付かなかった新しい自分の才能を見付ける事ができたのです。

 

そして『はじめましょ』は過去に捨てた女性を忘れられず、後悔の念とともに日々を過ごす男の話です。

 

ある日、彼は思いがけず昔想い合っていた女性と再会します。そしてその女性には子供がいました。

 

閨事(閨は女性の寝室を意味し、この場合性交渉を持つ事を指します)を連想させる仏様とその末に生まれる子供(『はじめましょ』に登場する子供は少々訳あり)という、この二つのお話はあまり無関係には思えませんでした。ここには作者である西條奈加先生のなんらかのメッセージが込められているのだというのは、勘繰り過ぎでしょうか?

 

さて、いかがでしたでしょうか?もし、興味を持っていただけたなら、ぜひお手に取ってみてください

 

それではまた、次回お会いしましょう。さよなら。

 

 


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