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【愛国心を裏切られた天才】窒素固定法の生みの親はなぜ毒ガスの製造に手を染めたのか?その謎に迫るノンフィクション!

宮田親平著『愛国心を裏切られた天才 ノーベル賞科学者ハーバーの栄光と悲劇』

 

ジャンル:ノンフィクション

 

概要

毒ガスの父と呼ばれた男、フリッツ・ハーバー。ハーバー・ボッシュ法の生みの親として知らる一方で、彼は祖国ドイツのために毒ガス製造へと手を染めた。国際条約に違反するとした指摘を受けながらも、ハーバーは第一次世界大戦の早期終結という目標をかかげ、一心不乱に祖国への愛から毒ガスを作り続けた。その結果、待ち受けていたのは二度の家庭の崩壊とナチス党によるユダヤ人迫害の苦しみだった。

 

本書はノンフィクションとして、比類なき評価を得ているそうです。

 

その理由としては、窒素固定法。いわゆるハーバー・ボッシュ法の生みの親として、ドイツ国民の食糧事情を改善し、その後の歴史の中で世界中の人々を救ったという経緯を持つからです。

 

しかし、そうした栄光の影には、やはり語る事を憚られるような暗い一面も存在します。

 

それは、彼のもう一つの異名に答えを見出す事ができるでしょう。

 

―毒ガスの父。

 

フリッツ・ハーバーは窒素固定法だけでなく、そうした意味でも有名な人物です。

 

なぜ彼がそう呼ばれるに至ったのかは本書をじっくりと読んでいただきたいですが、ここでは簡単に触れておきたいと思います。

 

時は第一次世界大戦時。ユダヤ人だったハーバーは科学者として、祖国ドイツのために毒ガス製造を開始します。

 

最初はそれほど効果は上がらなかったようですが、しかし後々に改良を加え、更に協力な毒ガスを造り出し、それによって戦況をドイツ有利にしていきます。

 

その背景には、彼のアイデンティティの欠如が深く関わっているのだと僕は思いました。

 

ハーバーはユダヤ人でありながら、ユダヤ教を捨てたりなど、あまり宗教的に熱心な人物ではなかったそうです。

 

元々ユダヤ人とは流浪の民ではり、世界各地にバラバラに存在していますから、それも無理からぬ事だと思います。

 

彼は自らをユダヤ人としてではなく、ドイツ人として考えていたようでした。そしてドイツのために、更に戦争・戦闘の早期終結のために、毒ガスの製造を開始してしまいます。

 

けれど、この毒ガス製造にさまざまな人が反対の意見を表明しました。

 

それの内の一人は彼の最初の妻、クララです。

 

クララもまた、科学者として世に出ましたが、ハーバーと結婚後は子育てや家事に忙しく、科学者としての活動をする暇がありませんでした。

 

対してハーバーは家庭を顧みる事なく、研究に没頭していきます。

 

そんな折、毒ガスの製造を始めてしまったハーバー。再三に渡り、クララは夫に毒ガスの製造を止めるよう説きます。しかしハーバーはクララの言う事に耳を貸さず、最終的にクララの自殺という結末で二人の結婚生活は幕を下ろします。

 

そして、ハーバーの毒ガス製造に批判的だったもう一人の人物は、かの天才科学者であるアルベルト・アインシュタインです。

 

彼はハーバーの毒ガス製造に対して、生みの親であるハーバーの意志に反して戦争を長引かせるだけだと常々批判していました。

 

けれども、結局はこの二人の意見を聞く事なく、ハーバーは毒ガス製造を続けていきます。

 

そうして、長く続いた戦争は一時の平和を取り戻します。

 

ですが、その後に独裁政治を敷く事になるナチス党が現れます。

 

その党首であるヒトラー総督は徹底したユダヤ人の迫害・弾圧を開始します。

 

これにより研究者の半数以上がユダヤ人だったドイツの科学界は衰退するとともに、ハーバーも亡命を余儀なくされました。

 

果たして、これはナチスの出現はハーバーに対する天からの罰だったのでしょうか?それとも、時代の要請だったのでしょうか?

 

祖国のために、そして人類のために科学を推し進めたフリッツ・ハーバー。彼は実際には、どんな人だったのでしょうか?

 

悪魔?それとも天使?それはわかりませんが、彼は一つの言葉を残しています。

 

曰く「科学者は平和時には人類に、戦争時には国家に帰属する」

 

さて、今回はここまでにしたいと思います。もし、興味を持っていただけたという方がいましたら、下のAmazonリンクからぜひ購入してみてください。

 

それではまた、次回にお会いしましょう。さよなら。

 

 

毒ガス開発の父ハーバー 愛国心を裏切られた科学者 (朝日選書 834)


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