こんにちはこんばんは。プラスアルファでございます。
今回も一冊読み終えましたのでご紹介させていただきます。
今回ご紹介するのはこちら。
堀辰雄著『風立ちぬ・美しい村・麦藁帽子』です。
『生きねば』のフレーズで人気を博したスタジオジブリ作品『風立ちぬ』の原作小説のである本書の初版は昭和二十五年十月二十日になります。
本書は解説込みで二百八十ページ。美しい村、麦藁帽子、風立ちぬの三編から構成されていて、それぞれを独立した短編、中編として読むことも可能であり、また全ての編を繋ぎ合わせ、一つの長編として読むことも可能です。
美しい村、ではとある女性に慣れていない年若い男性が、田舎に数日滞在する様子を描かれています。その様子は過去の自分を見ているようであり、どこかしら羞恥を誘うものでした。
しかし、だからといってページをめくる手を止めることはできず、読み進めていく内に彼の頭の中が自分とシンクロしてくるような感覚になります。
時代背景やイデオロギーの違いがあるにも関わらず、他人に疎く、女性に対してちょっとした苦手意識を持っている人なら、おそらく同じ感覚を得られるのではないかと思います。
そして次に麦藁帽子、では。幼馴染の少女との淡い思い出と、段々と疎遠になっていくふたりの関係性を表しています。
まだ語り手が幼かったころ、幼馴染だった少女との思い出と彼女に抱く淡い恋心を吐露した内容になっています。なかなか素直になれない少年期の男子のように、時にいたずらをし、時に遠回りなアプローチを続けていく少年。
けれども、少年が年を取るのと同じように、幼馴染もまた年を取り、少女から淑女へと成長します。それにつれて疎遠になっていく幼馴染と少年の様子と、彼の心中を綴った内容です。
そして最後に風立ちぬ。映画ではゼロ戦の製造の話になっていましたが、本書では主人公の職業は小説家でした。病気がちな妻節子の闘病生活と妻の死後の彼の生活。希望を持ち、そして愛しあった時間と愛する者がいなくなってしまった時間。ふたつの相反する悲しみに苛まれ苦悩する主人公は、妻の死後、ひとり人里離れた山の中に居を構えます。
そこで節子の影法師を感じながら、穏やかに暮らしていく、そんな話です。
この小説の凄まじいところは、全てが独立した個でありながら、それぞれが次の話。例えば美しい村が麦藁帽子へ、麦藁帽子が風立ちぬへとめぐっていくような構成になっている事です。
僕はなんとなく、これらは全てひとりの男の生涯を描いたものではないかと思いました。それをそれぞれ短編、中編の形を取ることで、ただの長編にしてしまうよりもずっと、深い感慨にふけることができるのではないかと。
とまあ、偉そうなことばかり言っていますが、これらはあくまで僕の個人的な感想です。
もし、興味を持っていただけたら、ぜひお手にとって読んでみてください。
それではまた、次回お会いしましょう。さよなら。