相沢沙呼著『invert 城塚翡翠倒叙集』
あらすじ
ずっと同じ人物の影に怯えて暮らす男性の一世一代の決断を見破る『雲上の晴れ間』。小学校の子供たちの安全を守るために先生が犯した犯罪『泡沫の審判』。たった一人の目撃者を巡って頭脳戦を繰り広げる『信用ならない目撃者』。全三編の中編小説からなる犯人の視点で描かれる叙述集。きっと誰もが彼女に騙される―。
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このミスに選ばれ、本屋大賞にもノミネートされた前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の後継シリーズに当たる本書は、前回同様主要キャラクターとして城塚翡翠が登場します。
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前作と異なる点は、今作は主に〝犯人の視点〟でストーリーが進行していく、という事です。なので、どちらかというと前回とは異なり、城塚翡翠という人物が少しだけ大人しい人物として描かれています。
おそらく、前作のmediumuを読んだ事のある人からすると、序盤はどこか物足りない感じがするかと思います。mediumuでは連続殺人犯を相手取る、という形式を取っていたのですが、今作は一事件につき一人だけの死者です。
ミステリ、推理物というよりは、犯人の視点から、城塚翡翠という人物に徐々に追い詰められていく様子、少しずつ首元を閉められていく感覚という感覚を覚え、どちかかというとサスペンス的な要素が強い作品かなと思います。
個人的に好きなエピソードは第一幕の『雲上の晴れ間』かなと思います。この章にはプログラマーの男性が出てくるのですが、女性経験が皆無な彼の言動はまさしく僕そのものであると思えて、少し身震いする部分がありました笑。
そして、前作同様に今作においても、城塚翡翠という女性の可愛らしさと頭脳の明晰さ、何よりそこからくる悪女っぷりが素晴らしかったなと思います。こんな女性には出会いたくないな、と思わせる反面、一度でいいから騙されてみたいとも思えるから不思議なものです。
ここでも、シャーロック・ホームズを始め、ミステリファンが小躍りしそうなちょっとした描写がいくつか見受けられますので、そういう点を探してみるのも面白路そうかなと思います。
そして、カバーイラストは前作に引き続き、イラストレーターの遠田志保志帆さんです。何度見ても、遠田先生のイラストは素晴らしいですね。
さて、いかがでしたでしょうか？相沢沙呼著『invert 城塚翡翠倒叙集』でした。もし、興味を持っていただけたという方がいましたら、下のAmazonからぜひ購入してみてください。
それではまた、次回お会いしましょう。さよなら。
