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夏目漱石『三四郎』感想。

昭和末期のとある青年と女の物語。

 こんにちは。プラスアルファです。先日夏目漱石の『三四郎』を読了したので、書評……というか、感想を貸せていただきたいと思います。

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あらすじ

熊本の高等学校を経て東京の大学に進学した三四郎は、たまたま列車で自由気ままな都会の女、美禰子に強く惹かれていく。

青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への戸惑いを三四郎の恋の始まりから終わりに至る過程の中で描いていく、「門」「それから」へと続く三部作の序曲となる物語。

主な登場人物

小川 三四郎

主人公。熊本の高等学校を卒業後に『東京帝国大学』に進学。追分町に下宿しながら、大学へと通っている。年は数えで23歳。酒もたばこもたしなみ、極端な政治的思想は持ち合わせていない。が、昭和の末期、日露戦争後の日本が舞台ということで、言動はどこか堅苦しい

里見 美禰子

 本作のヒロイン。三四郎が上京する際に乗っていた列車で偶然知り合う。蠱惑的な性格で、目鼻立ちも魅力的。おしとやかというよりはむしろ、上品だが挑戦的と受け止めた方がいいだろう。外国の言葉に関心を持ち、よく学んでいる。三四郎STRAY SHEEPという言葉を教えたのは美禰子。

野々宮 宗八

大学で光線の圧力の研究をしている。三四郎より七歳上で、言動も三四郎や彼の同輩と比べると大人びている。ただ、普段は研究室にこもり研究に没頭している。しかし不思議と他人と接することに慣れている様子だったのは、妹がいるからだろうか。美禰子との絡みが多く、一見すると三四郎の恋敵のようだと思った。

佐々木 与次郎

三四郎の同輩。田舎から出てきたばかりの三四郎に東京での所作をいろいろと教えていた男。行動力が高く、その人脈はすさまじい。三四郎が東京に出て初めての友人。他人の金で馬券を買ったりといった少々金にだらしない部分があるが、そのお陰で(といっていいのかは定かではないが)三四郎と美禰子の接点が増えた。

感想と考察

 昭和末期、日露戦争後の日本が舞台ということで、現代とのギャップにいささかとっつきづらさを感じた。それでも、読み進めていくうちに三四郎と美禰子の間の心の動きにフォーカスがあっていくことで、そうしたとっつきづらさも感じなくなった。

 現代において、恋愛には駆け引きが重要だ。ただ一夫的に気持ちを伝えたり、また何もせずじっと待っているようなことではいけない。それは現代だろうと三四郎の時代だろうと同じことで、そこにはツールの発達などとは関係がないのだと思った。美禰子と野々宮との仲のよさを感じさせる描写から、おそらくこの二人が最終的に結ばれるだろうと予想していた(失恋を描いたものだという前情報はあったので)。しかし実際にはどうだろう。本編では全く登場すらしていなかった人物との縁談が決まったことには、驚きを禁じえなかった。その部分にいささか納得のいかなさが残るが、そこは昭和という時代背景が影響しているのだろう。恋愛結婚というのはむしろ珍しい部類であるし、何より結婚とは本人たちの気持ち以上に家柄や功績などが重視される時代だったのだから、このあたりもしょうがない。

 ラストにおいて、三四郎が原口先生の絵のタイトルをなじっていた部分について。僕は三四郎にいたく共感した。と同時に子供っぽさを感じもした。何となく、すねた印象を受けたからだ。それならいっそのこと「あなたが好きだ」とでも言えばよかったのではと思うのは、やはり現代的な恋愛観しか持ち合わせていないブログ筆者の了見の狭さ故だろう。しかしそれでも、縁談が決まるまでには時間があったのだから二人だけの時間を大事にするということが可能ではなかったのだろうかというのが僕の考えだ。


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