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【書評】あの頃の気持ちを思い起こさせる〝痛い〟系ストーリー。夏木志朋『ニキ』

こんにちはこんばんは。プラスアルファでございます。

 

今回も一冊、読み終えましたのでご紹介を。

 

今回ご紹介するのはこちら。

夏木志朋著『ニキ』です。

 

喋っても黙っていても、周囲からの反感を買ってしまう高校生、田井中宏一はある日、ふとしたことから担任教師、二木の秘密をしっていまう。それは二木の人生を狂わせるには十分過ぎるほど、危ういものだった。その秘密をネタに二木を脅そうとしていた宏一。しかし、果たして二木に対してどのような要求をすればいいのかわからない。宏一と二木の関係は、一言では言い表せないほど複雑で、しかし他の生徒とは比べものにならないほど強くなる。共犯者というにはあまりにも希薄でありながら、赤の他人と切って捨てるにはどこまでも絡み合った二人の一言では言い表せない、絆―。

 

 

というわけで『ニキ』です。作者の夏木志朋さんは第9回ポプラ社小説新人賞を受領してデビューした新人作家です。

 

本書の主だった登場人物は二人。主人公の田井中宏一。そしてその宏一の担任教師である二木良平。

 

宏一は幼い頃から、自分と周囲にある感覚の溝に悩み、苦しみながら成長してきました。他人が何に笑い、何に起こっているのかがうまく理解できず、自分とのギャップに居心地の悪さを感じていたのです。いつからか、自分のことを〝宇宙人〟と呼ぶようになって、訓練と称して聞きたくもない流行りの音楽を聴いたりと、周りと調和しようと自分なりに努力してきました。そんな努力も失敗して、高校生になった宏一は完全に他人の輪の中に溶け込むことを諦めていました。

 

そんな宏一が所属するクラスの担任が、二木良平でした。二木は美術を担当する教師で、爽やかで一見すると大人しそうな、優しい担任の先生でした。大抵のことはそつなくこなし、生徒からも他の教師からも信頼の厚い人物だったのです。

 

でも、宏一だけはそんな二木の姿を反吐が出るような思いで見ていました。なぜなら、偶然にも二木の抱えている、絶対に他人に知られてはならない秘密を知っていたからでした。その秘密とは……!物語の核心に関わってくる部分なので、ここでは明かさないことにします。

 

この本を読んでのまず一番最初の印象は

 

なんか…覚えがあるな

 

でした。というのも、僕も学生時代は周りに馴染めずに一人でいることが多かったからです。とはいえ、宏一ほどひどいものでもありませんでしたが。ちゃんと友達はいたし…。

 

そして、もしかすると自分には特別な力があるかもしれない、というのも考えていました。自分が作ったものが他人に評価され、またたく間に有名になって…という妄想をしたりもしていました。あとテロリストが突然襲ってきたり。

 

この小説の主人公、宏一もまさにそうしたいわゆる〝痛い〟系の少年だったのです。なので、僕としてはこの主人公にはかなり好感を持てました。コミュ障なところもグッドです笑。

 

そして二木は、そんな宏一とある意味においては敵対関係を、またある意味では共犯者のような、ちょっと言葉が見付からないような、不思議な関係を築いていきます。

 

最初は嫌い同士だった二人ですが、お互いの秘密を共有していく内に心を通わせる…というとちょっと違いますが、少しだけ打ち解けていきます。そして宏一は、自分の中に眠っていたとある気持ちに気が付きます。それがまた、素晴らしいな、と思いました。

 

この小説は、宏一という学生視点が多く描かれていますが、おそらくあまり現役の学生には刺さらない内容なのではないかと思います。どちらかと言うと社会人や学生ではない人が読む方がいいのではないでしょうか。

 

もし、あなたの中に過去に忘れたつもりになっている何かがあるなら、きっとこの小説はそれを少しだけ思い出させてくれるかもしれません。

 

それでは、今回はここまで。それではまた、次回お会いしましょう。さよなら。

 

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ニキ


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