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【書評】人の心は、暗く悲しい。芹沢央『汚れた手をそこで拭かない』

こんにちはこんばんは。プラスアルファでございます。

 

今回も一冊読み終えましたのでご紹介します。

 

今回ご紹介するのはこちら。

芦沢央著『汚れた手をそこで吹かない』です。

 

本作は総ページ数237ページ。

 

『ただ、運が悪かっただけ』

 

『埋め合わせ』

 

『忘却』

 

『お蔵入り』

 

『ミモザ』

 

の5編からなる短編集です。一つ一つのエピソードは短く、分量も多くはないので、割とさくっと読み進めることができるのではないでしょうか。

 

内容は全編を通して、あまり救いのないものでした。

 

例えば、一番最初のエピソードである『ただ、運が悪かっただけ』はとある孤独な独居老人とまだ年若い見習い大工の間で起こったちょっとした諍いから端を発しています。

 

冒頭、その見習い大工の思い出話として語られるのですが、その内容は正直読んでいて気持ちのいいものではありませんでした。

 

簡単に言ってしまえば、いじわるな老人が若い見習い大工に難癖をつけ、困らせる、という内容です。これだけだとかなりマイルドな感じになるかと思いますが、実際に読んでみるとひどい罵詈雑言を並べ立てます。

 

それでも、見習い大工は仕事だからと自分に言い聞かせて老人に言われた通り、椅子を直したり立て付けの悪くなった扉を修繕したりを繰り返していました。

 

そんなある日、その老人から改築の依頼が舞い込みます。普段は本当に細々とした、素人にでもできそうな依頼しかしてこない老人なだけに、見習い大工も棟梁も困惑しつつ、内容を聞いていました。

 

改築工事が終わり、しばらくして

 

「血管工事じゃねえか!」

 

と老人から怒鳴り声が。しかしよくよく話を聞いていると、電球がなくて電気が点かなかっただけでした。

 

この場合ももちろん、見習い大工がいきます。電球を取り換えてやって、さて帰ろうとしたところで、見習い大工に向かって老人が脚立を買い取りたいと言い出します。

 

その後、老人は脚立から落ちて頭を打ち、死亡するのですが、いじわるで性格の悪い人物だっただけに、疎遠だった実子からは亡くなったことを清々される始末。

 

こうしたお話が後4編続きます。読んだ感想としては、唯一救いと呼べるものがあったのはこの最初のエピソードだけではないでしょうか。

 

読み終わった感想として、どれもこれも恐ろしいな、と思いました。全てのエピソードで共通しているのは、人間と中にあるほの暗さのようなものでしょう。

 

特に、一番最後のエピソードが最も僕にその感想を抱かせました。『ミモザ』ですね。

 

こちらはとある夫婦のお話なのですが、結婚したことのない僕にはこのお話の中で出てくる夫婦が実際に存在するのか否かはわかりません。しかし、実際にいたとしたら、果たして世の中の夫婦のどれくらいの割合がこの夫婦と似たような状況なのだろうと考えてしまいました。

 

さて、いかがでしたでしょうか?なかなかに人間の中にある恐怖のスイッチを上手に押してくれる作品なのではないでしょうか?決して驚かしや幽霊、妖怪や魑魅魍魎の類いに頼ることなく、胃の底から冷え冷えとするような作品でした。

 

というわけで、今回はここまでにしたいと思います。興味を持った、という人がいましたら、ぜひ読んでみてください。

 

それではまた、次回お会いしましょう。さよなら。

 

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