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【書評】彼に訪れる最後の瞬間。遠野遥『破局』

こんにちは。プラスアルファでございます。

 

さて、今回も一冊読み終えましたのどぇご紹介を。

 

今回の一冊はこちら。

 

遠野遥著『破局』です。

 

第163回芥川賞受賞作。

 

「私」こと陽介は規則正しい生活を送るいたってまじめな大学三年生。ある日大学の新歓ライブで出会った新入生の灯と知り合い、親しくなる。同時に麻衣子と別れた陽介はその後、ほどなくして灯と交際を始めるが……スポーツによって他者を破壊し、セックスによって自らが破壊される。確実に「私」は破局へと向かっていく―。

 

というわけで、『破局』です。著者の遠野遥さんはなんと受賞時28歳で、現在の僕とは1歳差ということになるんですかね。ん?

 

まあ年齢のことはおいておいて。本編について触れていきましょう。

 

まず、物語の主人公である「私」こと陽介。彼は至極まじめな優等生的存在で、公務員を目指す大学三年生。規則正しい生活を送り、公務員試験に向けて勉学に取り組み、鍛え抜かれた体は分厚い筋肉の鎧に包まれた好感の持てる人物です。正確も冷静沈着で非打ちどころのないまさに理想的な男性。果たしてどこに破局に繋がる要素があるのか。

 

そしてそんな陽介を取り巻くのが二人の女性。

 

一人は麻衣子。彼女は陽介と同い年でこちらも政治家になる、という目標を持った女性。知的な理性的なまさにクールビューティという言葉がぴったりくる人物です。この麻衣子が、物語開始時に陽介と交際していたのですが、ちょっとしたすれ違いから別れてしまいます。これがまず一つ目の「破局」ということでしょう。

 

そして二人目は灯。彼女は陽介の通う大学に新入生として入学してきた女の子で、陽介が壊れていく原因となった女性です。麻衣子と比べ、あまり知的とは言えないまでも、愛嬌のある可愛らしいイメージです。

 

 

さて、前述したとおり、陽介はラグビー選手でした。そして選手を引退した現在でも体を鍛え、規則正しい生活を送っているような人物です。

 

そんな陽介と麻衣子。二人はちょっとしたすれ違いから一度目の「破局」を迎えます。これについては二人ならではの少々特殊な事情はありますが、おおむねよく聞く話です。

 

そして次に、灯。彼女はまだ大学生になったばかりの初々しさの残る女の子です。実は男性経験がなく、陽介が初めての恋人でした。そして陽介と結ばれたことをきっかけにして、灯は自分でも気づいていなかった自分の中の一面を発見します。この発見こそが第二の「破局」へと陽介を導いていくのでした。

 

陽介は、大学生としてトレーニングと勉学に励む傍ら、地元の高校に通ってラグビーの指導も行っていました。そこで、後輩たちを鍛えていたのですが、それがあまりにもきつかったため、部員たちを追い込んでいきます。これによって後輩たちがどうなったのか、それは想像するしかありません。

 

 

さて、以上三つが本書で陽介の周りで起こる「破局」です。あくまでもこれは僕が読んでそう感じた、というものであるため、作者の意図とは違ったものもあるかもしれません。

 

本書を読んだ感想としては、陽介という一件すると完璧に近い人物。最初彼を目の当たりにした時、僕は正直言ってふーん、という感じでした。何か現実感に乏しい気がしたのです。

しかし、読み進めていく内に、陽介の中にある中核となる部分に触れることができます。そこで、僕は陽介という人間がどんな人間なのか、その一端を垣間見ることができるのでした。それによって、自分が陽介だったら…と想像しながら読み進めることができました。

一言で言うのなら、彼は風化していくレンガに上からコンクリートを塗り重ねているような人物です。いずれは崩れてしまいそうになりながらも、筋肉の鎧を纏うことで精神的にも肉体的にも何とか形を保っている。そんな印象です。

 

そんな陽介が麻衣子と別れ、灯と出会うことをきっかけに、コンクリートを塗り重ねていく作業にミスが出てくるようになりました。その結果として、彼の人生でおそらく一番大きいであろう「破局」が訪れるのです。

 

いかがでしょうか?もし、この記事を読んで興味を持っていただけたら、ぜひお手に戸って読んでみてください。それではまた次回お会いしましょう。さよなら。

 

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破局


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