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【書評】天沢夏月『七月のテロメアが尽きるまで』の感想など。

「キスしたい。雨にキスするみたいにしてほしい」

 高校生、内村秀(うちむら しゅう)は人付き合いを嫌い、積極的に他人と関わろうとはしなかった。昼休み、いつもの空き教室で昼食を食べていると、意外な訪問客があった。

 飯山直佳(いいやま なおか)はクラスの中でも割合目立つ方の生徒だった。よくいるカースト上位の女生徒。真っ白なカーディガンを羽織り、まじめで人当りもいい。

 そんな彼女がなぜこんなところに来たのだろう?秀は不思議に思ったが、それは直佳も同じだったらしい。彼女も不思議そうな顔をして、秀を見ていた。

 その空き教室で秀は直佳の秘密を知る―。

「七月のテロメアが尽きるまで」の画像検索結果

 

 大まかなストーリー

 ある日、ひょんなことから直佳の秘密を知ってしまった秀。それは、彼女が実は自殺志願をしているというものだった。

 直佳が落としたUSBメモリの中に書かれていたそれを見て、秀は困惑する。すぐに返すべきだと思い至るが、自分が持っているとは知られたくない。どうにか一計を案じようとする秀だったが、それより早く、直佳が秀との距離を縮めてくる。

 結局、紆余曲折の末にUSBメモリは秀が持っている事になった。その方がいいと直佳が言ったから。

 その後もふたりの交流は続き、ふたりきりで旅行をする仲に。

 恋ではない。まだ名前のないこの感情に名前を付けるとしたら、それは『透明』と言っていいだろう。

感想など。

 まず、一言でこの作品を表すとするなら、土砂降りの〝雨〟と言っていいと思います。

 主人公はとある事情から人付き合いを苦手としている少年、内村秀君。彼は特別人を避けているわけでもなく、コミュ障というわけでもありません。ただ、関わりたくはないと思っているだけ。そんな秀君はヒロインの飯山直佳と出会ってしまいます。いや、もともとクラスメイト同士なので出会うも何もないのですが、それまでまともに喋った事のないふたりなので読者視点だと出会いと言っていいかと。

 まあこれ以前にもふたりはであっているわけですけど。それは作中で明かされます。

 直佳は脳に障害を負い、命短く、だからこそ青春を謳歌しようとしている少女です。薬を飲み、進行を遅らせる事ができるものの、副作用がひどい。しかしそれを秀君を始めとしてクラスメイトや学校関係者には見せないようしているという優しく強いという部分が本当に印象的な少女です。高校生でここまで他人を気遣える人っている?

 しかし病気は彼女の脳を確実に蝕んでいきます。そして直佳が成人後間もなく、その闘病生活は幕を閉じるのです。

 その間に、ふたりはケンカをし、仲直りをし、恋人のような関係になり…と様々な事が起こります。それはたぶん、直佳にとってかけがえのないものだったのでしょう。そして秀にとっても。

 作中で「自分自身の命を人質にして彼女に生きる事を強要した」というような表現があります。それは彼自身がわかっている通り、病気で苦しんでいる直佳にとってとても残酷な要求でした。しかし、ここで僕は秀君をひどい奴だ、などと言うつもりはありません。

 生きていてほしい、と願うのはごくごく当然の事だと思います。もちろん、本人が望めば、ですけど。自殺まで考えた直佳にとって、それがいい事なのかどうかはわかりません。が、少なくとも病気の苦しみから解放されるのは確実です。だからといって自殺を許容できるほど、秀君は大人ではありませんでした。たぶん大人でも難しいでしょう。

 結局は、自分の都合を他人に押し付けているだけ。ただそれだけの事なのです。

 ざぁぁ、と土砂降りの雨のように降りかかる病魔。しかし、その中でも傘をさしてくれる人物が現れた事は、直佳にとって意味のある事なのではないかと思いました。 

 最後まで拙い文章を読んでいただき、ありがとうございます。

 

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