こんにちはこんばんは。プラスアルファでございます。
というわけで、今回も一冊、読了本をご紹介!
今回ご紹介するのはこちら!
綾辻行人著『緋色の囁き〈新装改訂版〉』です。
綾辻行人さんと言えば、先日に『Another2001』を刊行されたことで話題となりましたが、今回はそんな綾辻さんの初期の名作の一つです。
本書『緋色の囁き』が最初に刊行されたのは一九八八年十月だったそうです。この時期、著者はまだデビューして間もなく、この頃にはやっと『館シリーズ』が終わったばかり。その興奮も冷めやらぬ中での発売でしたから、当時の綾辻ファンの方の嬉しさはひとしおだっただろうと想像します。
あとがきにもありますが、この『緋色の囁き』は実は著者のデビュー作である『十角館の殺人』の後、すぐに書き下ろされていたそうです。ではなぜすぐに本にならなかったのかと言うと、そこには販売戦略上の事情があったのだとか。当時からなんだかんだとマーケティングは重要だったわけですね。
さて、本著『緋色の囁き』は昭和の末期を時代背景とした、閉鎖された名門お嬢様学校である全寮の『聖真女学園高校』を舞台とした連続殺人事件を題材としています。
ホラー、ミステリ、サスペンス。それらが見事に混ぜ合わさり、毒々しい色彩を帯びていることは言うまでもありません。僕のような綾辻行人にわか程度なら、後期の作品だ、と言われれば簡単に信じてしまうかもしれません。
主な登場人物は十人。
和泉冴子…聖真女学園二年生。ある日突然、叔母を名乗る人物に連れられ、それまで通っていた学校から半ば無理矢理な形で聖真女学園へと連れて来られる。幼少期の頃の記憶がなく、夢遊病の気質がある。
高取惠…冴子のクラスメイトであり、寮では同じ部屋に住んでいたクラスメイト。所属するクラスで行われる『魔女裁判』により、魔女として命を落とす。冴子とは二、三日の付き合いでしかなかったが、彼女の行動や言葉から、その人柄を推し量れる。
城崎綾…冴子のクラスメイト。学級内ではリーダー格の生徒で周囲からは『綾さま』と呼ばれている。普段はおしとやかで知的な優等生だが、その裏では『魔女裁判』で裁判長的な役割を果たす。
守口委津子…最初の『魔女』に選ばれてしまった少女。図書委員をしており、何かと冴子の世話を焼こうとする。
堀江千秋…綾の腰巾着の一人。『魔女裁判』と称して惠を死に追いやった内の一人。一連の連続殺人に関して、一番最初の被害者。
中里君江…綾の腰巾着の一人。惠の死に関わった人物。第二の被害者。
桑原加乃…綾の腰巾着の一人。惠の死に関わった。最後の被害者。
宗像千代…冴子の叔母。冴子を『聖真女学園』に連れて来た人物で、冴子の母親とは姉と妹に当たる。
高取俊記…惠の兄。冴子とは惠の死をきっかけにして出会う。惠の死を調べている内に冴子と親しくなり、その後の連続殺人事件の解決にも関わった。
山村トヨ子…『聖真寮』の管理人を務める女性。
上記十人が主な登場人物です。
事件のきっかけは俊記の妹でもあり、冴子のルームメイトでもあった高取惠の死。彼女は全身に灯油を被り、そこへ火を点ける焼死という形でこの世を去りました。警察では、惠の死を焼身自殺として、本格的な捜査は行われませんでした。
惠の死をきっかけにして、冴子と俊記は出会うのですが、惠の兄である俊記は「妹が自殺なんてしない」と主張し、独自に調べることに。その後、『聖真女学園』に現れた連続殺人犯の存在に学内は混沌と化していきます。
さて、今回のお話はミステリの側面が強いので、あまりべらべらと書いてはネタバレになってしまいますね。なので、さくっと感想を述べたいと思います。
今回の『緋色の囁き』のキーワードは『赤』でした。どういうことなのかは実際に読んでみて欲しいのですが、とにかくあらゆる場面で『赤』という単語や色などが登場します。
また、ある意味では学園ものの側面も持つ本作は、その舞台となった『聖真女学園』が拘束の厳しい、抑圧された環境にあります。
そんな中にあって、いじめはおそらく避けては通れない問題でしょう。そこに通う生徒たちは、自分たちが虐げられている、と感じているのですから、そのストレスを解消するためにクラスメイトに対していじめを行う、というのも自然な流れだと思います。もちろんいじめを肯定しているつもりはありませんが、『聖真』のような場所では、割とありそうなことだと思ったのです。
そこへ、惠の死をきっかけに登場した男性。惠の兄の俊記は刑事を覗けば、作中で登場する唯一の男性です。そして冴子は、はっきりと描写された部分はありませんでしたが、この年上の男性に心惹かれている様子でした。
もし今後、二人のその後がわかる日が来るのなら、俊記にも冴子にも、幸せになって欲しいと思います。
とまあ、今回はこの辺りで。いかがでしたでしょうか?
もし、興味を持っていただけたら、ぜひ読んでみてください。それではまた、次回お会いしましょう。さよなら。