こんにちは。今回も一冊読了したので感想などを書いていきたいと思います。
今回ご紹介するのはこちら。
創元推理文庫より、小林泰三著『クララ殺し』です。前作である『アリス殺し』の続編として位置づけられる本作ですが、『アリス殺し』を読んでいなくても大丈夫です。
ちなみに僕が読んだのは文庫版で、表紙デザインは上の通りですが、もちろんハードカバー版もあります。それが下のようなデザインです。
どちらのデザインも素晴らしいですね。
物語の始まりはトカゲのビルが道に迷い、不思議の国からクララたちの暮らすホフマン宇宙へとやってきたところからです。
沼に入り込んでしまい、溺れかけながらホフマン宇宙へとやってきたビルは、そこで最初にふたりの人物と出会います。このふたりが、クララ殺しにおいて重要な役割を果たす、クララとおじいさんです。
クララの服装は青いワンピースに金色の髪という『アルプスの少女ハイジ』を連想させるいでたちで、おじいさんはそんなクララのために車椅子を押しています。
クララとドロッセルマイアーと名乗るふたりと出会い、ビルのホフマン宇宙での生活は始まりました。
そんな最中、現実の地球でも不思議なことが起こります。
ビルの分身であるアーヴァタールと呼ばれる存在の井森の前にふたりの人物が現れるのです。
彼らもまた、くららとドロッセルマイアーと名乗りました。
くららとドロッセルマイアーはホフマン宇宙での話を井森にします。井森はふたりがホフマン宇宙の住人だということを確信し、更にふたりも井森がビルであると確信します。
そして、くららとドロッセルマイアーは井森に対して脅迫まがいの依頼をするのです。
その依頼の内容とはくららの命が狙われているから助けてほしい、というものでした。
当然、井森は最初は断ろうとしますが、ドロッセルマイアーの脅しにより半ば強引に井森はくららを守ることになってしまったのです。
こうして、井森はくららを狙う犯人を突き止めるため、現実の地球とホフマン宇宙の二ヶ所で捜査を開始することになりました。
しかし、井森はともかくとしてビルはかなりアホなので、捜査には難航します。
そんなこんなで全く進展しない捜査をしていると、クララが殺されてしまい、現実でもくららの遺体が見つかってしまいます。
どうにかして犯人を見つけ出そうとするビル。そんな彼の下へ、頼もしい助っ人が現れます。ホフマン宇宙で作家をしているマドモアゼル・ド・スキュデリという人物でした。
スキュデリはかなりの切れ者で、ビルとともに捜査を開始します。彼女の卓越した観察眼と推理力でもって、ホフマン宇宙での事件は解決へと舵を切ります。
それと同時に現実でも、ドロッセルマイアーとくららがしかけた秘密をスキュデリと井森が協力して解き明かします。
こうして事件は解決へしました。最後には犯人から言葉を聞くことはできなくなってしまいますが、解決したのはよかったと思います。
最初からスキュデリが全部やってれば…と思わなくもなかったですが、彼女の立場からすれば、そこまで大事になるとは思わなかったのでしょう。何より、作家の例に漏れずスキュデリも人づきあいが希薄な人物なので、騒ぎ自体を知らなかった可能性は十分にありますね。
何はともあれ、超展開や超理論を用いる同シリーズでは納得のラストでした。
しかし最後にビルは不思議に国に帰れたのでしょうか?そのあたりの描写はなく、もしかしたらこのまま次巻の『ドロシイ殺し』に続くのかもしれませんね笑。
さて、今回はここまでにしておきたいと思います。それではまた、次回お会いしましょう。