こんにちは。今回は割と硬派な本をご紹介します。
それがこちら!
高橋弘希さん著作、第159回 芥川賞受賞作「送り火」です。
田舎の街に転校してきた中学三年生の少年、歩。彼の父親はいわゆる転勤族で、父親に連れられてあちこちを渡り歩いている中で、歩は素早く周囲に溶け込むことが得意になっていきました。
もちろん、その能力は彼が転校したクラスでも発揮され、すんなりと受け入れられます。
成績も優秀で大人して真面目な歩。そんな彼と一番最初に友達になったのはクラスのまとめ役である晃です。彼はガキ大将で、藤間や稔を加えたグループのリーダーでもありました。
全く正反対のふたりの間には、学校行事を通じて確かに絆と呼べるものがあったのかもしれません。
少々過激な言動はあるものの、晃との平穏な日々を送っていた歩でしたが、ある日晃がふと過激な遊びを提案します。
それは小中学校ならどこにでもありそうな科学準備室で薬品棚を見た晃が提案した遊びでした。
「回転盤」と彼らが呼称する花札を進化させたような遊びで、それに負けたものはロシアンルーレットの要領で科学準備室から盗ってきた硫酸の入ったビンと安全な液体の入ったビンの中から一本を選び、頭から被るというものです。
ここで、勝負に負けたのは稔でした。彼は典型的ないじめられっ子で、常に負け常連のような存在でした。
以前、同じような遊びをした時にも、稔は負けていました。いくら何でもあり得ないと不審に思った歩は、遊びの際には常に親を務めている晃の一挙手一投足を観察します。
すると、晃がイカサマをしているのを発見してしまいます。
それからでした。事態がどんどんとエスカレートしていったのは。
その後も何度か花札の進化版のような遊びをして、稔を負けさせ、首を絞めさせたりしていたのです。
しかし歩は稔を助けようとはしませんでした。何ごとも花札で決めるのがしきたりらしく、また下手なことをすれば自分に災いが降りかかると思ったからです。
そうして、もやもやするような気持ちの悪さを抱えたまま、けれど見かけ上は平穏な生活を送っていた歩でしたが、突然とある森の中に連れていかれます。
そこには、歩たちの通う中学校の卒業生を含め、数人がいました。もちろん稔もです。
稔は彼らに命じられるままに曲芸を披露し、全身を打撲や血だらけにしていました。
しかし、ついに我慢の限界が訪れた稔は彼らを持っていたナイフで刺してしまいます。
歩のことも追いかけてきます。歩は命からがら逃げ伸びました。
最後には稔の怒りが爆発する、と言う終わり方でした。
感想
いじめ、またはそれに類する行為について考えさせられる内容でした。
硫酸をかけようとしたり、首を絞めたりなど、過激でバイオレンスな表現が目立っていて、おそらく人を選ぶだろうと思います。
ただ、歩と稔。この二人に注目して読んでいるときっと色々なことを考えるだろうと感じました。
僕自身はイジメを受けたことはないのでわからないのですが、イジメの被害者が傷害事件や障害未遂事件を起こす、また殺人未遂以上の犯罪行為を犯すというのは全く聞かない話ではないので、これもリアリティを持って僕の中に落ちてきました。
というわけで、いかがでしたでしょうか?今回はここまでにしたいと思います。
それではまた、次回にお会いしましょう。さよならっ。